平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

2024年06月12日

戸籍や住民票について、士業には、「職務上請求」というものがあります。職務上請求については、なんでもかんでも士業なら取得できるといった誤った認識の依頼してくる方がいらっしゃいます。が、当然、なんでもかんでも取得できるというわけではありません。職務に関連していなければ、取得は士業と言えどもできません。詳しく解説いたします。

目次

1.本人請求ができる範囲

2.職務上請求で取得できる範囲

3.職務で密接に関係すると言っても・・・

4.まとめ


1.本人請求ができる範囲

 戸籍を本人が本人のものを取得するのは当然できますが、それ以外にどの範囲まで、取得できるのでしょうか?

 配偶者、祖父母、父母などの直系尊属、子、孫などの直系卑属の戸籍が範囲となります。自分で戸籍を取得する場合、本籍のある市区町村の役場で関係が確認できない場合には、関係が分かる戸籍で証明しなければなりません。証明できないと、請求している本人との配偶者・直系尊属・直系卑属といった関係を役場の窓口の担当者がわからないためです。

 まずは、請求者本人の戸籍や改正原戸籍などを取得して、そのあとに請求することになると思います。

2.職務上請求で取得できる範囲

 先にも書きましたが、「職務上請求」は、士業の職務に関連している場合をもって、取得が可能となります。例えば、相続登記をするために遺産分割協議書を作成しなければならないとき、法定相続人全員の参加が義務付けられていますので、この場合は、法定相続人に関連する戸籍を取得することができますが、遺言書作成となりますと、話は大きく変わってきます。遺言書(特に公正証書遺言)を作成する場合、士業に依頼したとしても、その範囲は、依頼者(遺言者)本人が、取得できる範囲と受遺者のものまでとなります。

3.職務で密接に関係すると言っても・・・

 相続登記をした配偶者の方が遺言書を作成するときに、戸籍の取得の依頼がありました。その時に、本人で取得できる範囲までであることを告げると、「先生、相続登記の時に、相続人全員の戸籍取得してくれたじゃないですか?」とおっしゃられましたが、職務内容が異なってしまいますので、上記範囲までの取得しか、職務上請求でも許されていません。職務で取得できる範囲があることを伝え、納得していただきました。

 行政書士として遺言書作成のご依頼を受任しても、行政書士の職務上請求書では、本人取得範囲までしか認められていません。依頼があれば制限なしに戸籍謄本や住民票を取得できるというわけではなく、依頼者が本人又は第三者として請求できるものを代わりに請求できるに過ぎません。依頼者の方が請求できないものは、いくら職務上請求でも取得することができません。職務上請求は、法令上万能ではありません。

 しかし、職務上請求を使うと、取得できてしまうケースがあります。ですので、権限外の取得や、興信所などに職務上請求を販売する事件が後を絶たないわけです。

※行政書士会では、職務上請求書購入の際、申請書類には「誓約書」「使用済みの職務上請求書」「研修(職務上請求に関する研修)の終了証」の添付を要求されます。

4.まとめ

 稀にですが、戸籍の取得のみの依頼があることがありますが、お断りするようにしています。戸籍の取得のみでは、根本となる職務ではないためです。それに、トラブルに巻き込まれることが、極めて高い確率で予想できるためでもあります。

 専門家である士業が、適切に職務上請求を使ってこそ意味があります。管理も当然必要なのですが、管理しやすくするために、職務上請求は、複数冊購入することもできますが、必ず1冊ずつ購入するようにしており、厳重に保管しております。

 以上のことからわかるように、独身の方で、ご兄弟の方に遺言書を作成される方の場合には、依頼者の方から、受遺者の方に戸籍等の取得のお願いをしていただいております。

最新のブログ記事

遺言書の作成を考える際、多くの人は「書かなければ」と急いでしまいがちです。しかし、いきなり遺言書を書こうとしてもうまくいかないことがよくあります。遺言書は、財産をどのように分けるかや、自分が亡くなった後のことを記す重要な書類です。しかし、これを作成する前に、自分の財産や意向についてしっかりと現状を分析し、整理する必要があります。そこで、まずはエンディングノートの作成をお勧めします。市販のエンディングノートで十分ですが、この作業は後々の遺言書作成に向けて大きな助けとなるでしょう。

遺言書を作成するタイミングについて、健康寿命や認知症発症年齢の統計を参考に検討することは、今後の人生設計において非常に重要です。高齢化社会が進む中、自分の意思を明確に遺すために、遺言書の作成は避けられないものとなりつつあります。特に、認知機能が低下する前にしっかりと法的な手続きを行うことが求められます。ここでは、健康寿命と認知症の発症年齢を基に、遺言書作成を検討すべき最適な年齢について考察します。

新年あけましておめでとうございます。旧年中は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございました。皆様のお力添えのおかげで、弊所は無事に新たな年を迎えることができました。本年も変わらぬご支援をいただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。