平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

(論点)相続問題(墓じまい)

2024年03月30日

先日、「墓じまい」についての相談がありました。墓地にも種類があり、墓地・霊園といったお墓のために用意されている区域や土地に建てられるものと、集落の近くの山や個人が所有する田畑などの敷地内に建てられているお墓などがあります。実際、相続登記実務で、地目が「墓地」となっている土地があることもしばしばあります。墓じまいに際し、注意する点などをお話したいと思います。

目次

1.墓地の種類

2.一般的な墓地の墓じまい

3.個人墓地と「みなし墓地」について

4.個人墓地の墓じまいについて

5.新たに個人墓地の登録許可は出るのか?


1.墓地の種類

 一般的に「寺院墓地」「公営墓地」「民営(民間)墓地」が運営している墓地を借りているものとなります。墓地や霊園を経営する寺院や自治体・公益法人と契約し、その敷地にお墓をつくる形態のものです。(以下、一般的な墓地といいます。)

 このほかに、山の中や、個人が所有する田畑などの敷地の中に建てられている個人墓地が存在します。さらに、集落墓地、部落墓地、村墓地などと呼ばれ、地域や自治会・複数の人が管理者や所有者となって建てられている野墓地・共同墓地もあります。

 ここでは、一般的な墓地との比較として「個人墓地」を対象にお話を進めていきます。一般的な墓地は、運営している寺院や自治体・公益法人が所有権を持っていますが、個人墓地は、墓地の名義人は個人となります。

2.一般的な墓地の墓じまい

不要になった墓地は、霊園・墓地に返還できますが、墓地を解約・返還ができるのは墓守として登録している人のみが可能な手続きとなります。遺言書などで「祭祀者」として指定されており、これを墓地の運営に墓守として届け出ている方が解約・変換ができる者となります。

 手続き的には、墓石の撤去と閉眼供養(魂抜き)が必要になります。また、寺院の墓地の場合ですと離檀料がかかる場合があります。各運営にご確認ください。

 費用につきましては、地域によりまちまちですので、今回は割愛いたします。

 墓じまいした後の遺骨などを別の墓地に移転する「改葬」につきましては、実施する前に行政上の手続きが必要です。一般的な手続きの流れとしては、市区町村役所から改葬許可申請書を入手し、墓地管理者から埋葬証明書を、そして移転先から受入証明書を入手します。この埋葬証明書とは、墓地に遺骨が納骨されていることを証明するものです。

 証明書を入手後に、改装手続きを行うことになります。その後、樹木葬などの墓石を伴わない墓地へ遺骨を移転させることになります。

高松市HP引用
高松市HP引用

3.個人墓地と「みなし墓地」について

 昭和23年(1948年)5月31日に施工された「墓地、埋葬等に関する法律」(以下「墓埋法」)の規定に則って運営・管理されており、許可されている墓地以外の場所に建てることはできません。この点、一般的な墓地も個人墓地も変わりません。

「墓地埋葬等に関する法律

第10条 墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。」

 それでは、墓埋法施行以前の墓地はどうかと言いますと

「墓地埋葬等に関する法律

第26条 この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。」とあり、都道府県知事の許可をみなす規定が存在します。

 これは、個人墓地も同じで、みなし規定がありますので、個人墓地があっても認められることになります。

4.個人墓地の墓じまいについて

 個人墓地の墓じまいも、一般の墓地同様の手続きで行います。違いとしては、所有権が個人にありますので、故人墓地として地目は「墓地」のままになります。

「墓地」でも売却をすることもできます。しかし、墓地の運営者が変更されますが、現行の墓埋法では、墓地運営は行政の許可を得た宗教法人や公益財団法人でなければなりません。となりますと、現行の墓埋法では原則として、墓地の運営許可は個人には与えられないため、個人間での売買はできません。そうなりますと、地目の変更が必要となります。土地家屋調査士に依頼をして地目変更をすることとなります。しかし、これは登記簿上のはなしです。墓石の撤去と閉眼供養(魂抜き)は当然必要です。また、行政への改葬の手続きには、墓地の地目の登記簿の添付が必要です。

5.新たに個人墓地の登録許可は出るのか?

 それでは、新たに個人墓地を申請し都道府県知事の許可を取得できるのかという問題点が出てきます。こちらは、高松市の窓口に問い合わせをしたところ、現在では個人墓地自体の申請を受け付けていないとのことでした。

 以前、山林の中の他人の個人墓地を買い取って自分の個人墓地にしたいという問い合わせがありましたが、買うことができてもさらに都道府県知事の許可を取得して、自分の個人墓地として利用することは不可能であるということになります。

 無許可墓地は違法なため、「半年以下の懲役刑もしくは5000円以下の罰金」という罰則も定められています。「ええ!うちは都道府県知事の許可を取っていない」という方について、悪意なく先祖代々守ってきたという場合が多いため、必要な書類を提出し承認されれば、みなし墓地として追認してもらうことも可能です。県(香川県高松市の場合は高松市)では、墓地のリストを管理しています。ですので、登録されているのかわからない方は、県庁又は市役所等の管理部門に問い合わせてみてください。そしてまだリストの登録されていない場合は、リストに登録する手続きをすることをお勧めいたします。

 また、登録されてい個人墓地から別の場所へ勝手に移転することも認められていません。

最新のブログ記事

遺産分割協議は、相続における重要な手続きの一つであり、遺産を円満に分けるためには慎重な対応が求められます。協議に参加する全員が満足する結論に達するのは難しいこともありますが、適切な準備と注意を払うことで、トラブルを最小限に抑えることができます。以下に、遺産分割協議において特に注意すべき5つのポイントを解説します。

「貸金庫は相続対策になるのか?」という問いに対して、まず、貸金庫の役割と使用方法、そして相続が発生した際の手続きについて理解する必要があります。貸金庫は一般的に、貴重品や重要書類を安全に保管するための手段として利用されますが、相続の場面ではその利便性が問題になる場合があります。特に、相続発生後に貸金庫の内容を確認するために、金融機関によって相続人全員の同意や手続きが必要となるケースがあり、これが相続対策として適しているのかどうかを検討する必要があります。

遺産分割協議を進める際には、被相続人の財産を正確に把握することが重要です。通常、遺産分割協議の前に行う「遺産調査」では、被相続人の名義となっている財産のすべてを確認することが求められます。しかし、どれだけ慎重に調査を行っても、全ての財産を網羅できないことがあります。特に、不動産に関しては、被相続人が所有している財産が思いがけない場所に存在していることがあるため、その把握が難しく、遺産として漏れてしまうこともあります。この場合、遺産分割協議書にどのような対策をしておけば、当該遺産分割協議書を用いて、後に発見された不動産の手続きもできるのかについて解説したいと思います。