平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

(論点)相続登記に権利証は必要か?

2024年08月16日

結論から言いますと、書類がすべてそろっているようであれば、権利証の提供は不要となります。しかし、提出すべき書類の中には、相続が発生するタイミングによっては、入手できないものも存在します。今回は、通常の取引(売買)では、権利証が必要となるのに、相続では不要になるのか、またどのようなときに必要となるのかについてお話をしたいと思います。

目次

1.不動産の登記の概略

2.不動産の相続登記に必要な書類について

3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限

4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応

5.まとめ


1.不動産の登記の概略

 売買の場合、売主(現所有者)と買主がいます。この2当事者間で、売る意思表示と、買う意思表示が合致すれば、売買は成立します。それでは、相続登記を見てみましょう。被相続人(亡くなった方で現所有者)と、相続人(遺産分割協議により特定の相続人とする)と、こちらも2当事者がいるように思えるかもしれませんが、1方当事者である被相続人は亡くなっており、意思表示をすることはできません。つまり、相続とは、被相続人の身の上に発生した時、相続人全員に対して平等にその権利と義務が承継されることを指します。意思表示は関係ありません。そのため、被相続人が多額の借金を残して亡くなり、めぼしい財産もない場合には、「相続放棄」という手続きにより、すべてを承継する相続人ではなかったことにしてもらうことができます。

2.不動産の相続登記に必要な書類について

 相続登記に必要な添付書類について、「亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍」「相続人全員の戸籍」「不動産を取得する者の住民票の写し」「遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(相続登記の場合、期間制限はなし)」などに加え、登記簿上の被相続人の本人特定のために、「住民票の除票」又は「戸籍の附票(名義人の住所の履歴が記載されたもの)」が必要となります。不動産を異なるタイミングで取得しているような場合ですと、A不動産では、A市住所、B不動産の名義人の住所が、B市住所ということもあり得ます。そして、登記官及び登記のシステムは、同一人の判定を「氏名」と「住所」で行っているため、住所がつながらなければ、同一人とは見ていただけないということになります。

3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限

 今までは住民票の除票も戸籍の附票も保管期間が5年間だったため、抹消されて取得することができませんでした。そのため、5年以上前に死亡した被相続人の相続登記を申請するためには、住民票の除票と異なる書類を用意しなければならず、相続登記の現場では難儀したものです。しかし、法改正によって150年間は保管してくれることになりましたので、その問題は解決することができます。

 しかし、保管期間が150年に改正されたのは、令和元年6月20日以降の住民票の除票や戸籍の附票ですから、令和になる前の平成以前の住民票の除票や戸籍の附票が取得できないことに違いありません。

4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応

 保存期限が超過している住民票の除票や戸籍の附票は取得することはできませんので、「調査はやりましたが見つからなかった証拠」として、「廃棄証明書」を発行してもらうようにします。

 ここで初めて、登記名義人の特定をするために次の手が打てるわけです。公の資料での同一人の証明は困難となりました。そこで使うのが「権利証」です。

 しかし、権利証も紛失しているケースは十分考えられます。

 そこで、権利証までない場合には、戸籍の本籍地として記載されている住所表記が、登記簿の住所と同じであれば、同一人の判断をしていただけます。

 これもだめだった場合、相続人全員の同意に基づく「上申書」を提出することになります。

5.まとめ

 不動産登記における売買は、売主と買主の意思表示により成立し、その後登記されます。一方、相続登記では、被相続人の意思表示は関係なく、死亡と同時に相続人へ権利と義務が承継されます。相続登記には「戸籍」「住民票の写し」などが必要で、住所がつながらないと同一人物と認められません。以前は住民票の除票や戸籍の附票の保管期限が5年でしたが、法改正により150年に延長されました。ただし、平成以前の書類は対象外で、取得できない場合は「廃棄証明書」を発行し、他の証明手段(権利証の添付)を検討します。

最新のブログ記事

2024年4月に施行された相続登記の義務化は、全国の不動産所有者に大きな影響を与え始めています。この制度は、相続人が相続した不動産の登記を3年以内に行わなければならないというものです。これにより、未登記の不動産が減少し、不動産の管理や利用がより効率的に行われることを期待されています。しかし、実際の運用において、さまざまな影響が現れています。以下に、いくつかの主要な点を項目ごとにまとめます。

高齢者の生活が困難になっている現状については、さまざまな背景や事例が存在します。ここでは、社会福祉士の方と話をした中で聞いた、主な要因と具体的な事例をいくつか項目ごとにまとめます。

「所有不動産記録証明制度」は、2026年4月に施行予定の新たな不動産制度です。この制度は、相続時や不動産の管理に関する課題を解決するために設けられ、全国規模での不動産情報の把握を大幅に簡素化することを目的としています。従来の不動産調査では、所有者が複数の市町村に不動産を所有している場合、各市町村役場で個別に調査する必要がありましたが、この制度により、一括して全国の不動産を確認できるようになります。それでは、その内容を見ていきましょう。