平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

(論点)遺言書による相続登記の添付書類

2024年11月26日

相続登記を行う際に、遺言書がある場合にはその種類によって必要な添付書類が異なります。遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がありますが、それぞれの遺言書に応じて準備すべき書類や手続きに違いがあるため、適切な書類を揃えることが重要です。以下では、相続登記における遺言書の種類ごとの添付書類について詳しく解説します。

目次

1. 自筆証書遺言書を用いる場合の添付書類

2. 公正証書遺言書を用いる場合の添付書類

3. 自筆証書遺言と公正証書遺言の手続き上の違い

4. まとめ


1. 自筆証書遺言書を用いる場合の添付書類

 自筆証書遺言は、遺言者が自分で書き残す遺言書です。この形式の遺言書を基に相続登記を行う際には、検認手続きが必須となります。検認手続きは家庭裁判所が遺言書の内容や形式が適正であるか確認する手続きであり、この手続きを経て初めて遺言書の内容が法的に有効となります。検認手続きが済んでいない自筆証書遺言を使って相続登記を行うことはできません。

自筆証書遺言書による相続登記に必要な書類

自筆証書遺言に基づいて相続登記を行う際に必要な書類は以下の通りです:

遺言書の原本:自筆証書遺言そのものです。遺言者が自筆で作成し、署名捺印されたものを提出します。この時、民法上の要件がクリアされているかについて確認します。具体的には、「自書されている(財産目録は除く)」「日付の記載」「氏名の記載」「押印がある」「加除、その他変更が民法の要式に従っているか」です。

遺言書の検認済証明書:検認手続きを家庭裁判所で行った後、発行される証明書です。この証明書がなければ、遺言書の効力が法的に認められないため、必須の書類となります。家庭裁判所での検認が終了した際に発行されるので、相続登記を行う前に必ず取得しておきましょう。

被相続人(故人)の除籍謄本:相続開始の事実を証明するために、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本)が必要です。除籍謄本は、被相続人の最終的な戸籍から取得します。

相続人の戸籍謄本または住民票:登記名義を移転する相続人の身分証明書として、戸籍謄本または住民票が必要です。戸籍謄本は、相続人であることを確認するため、住民票は住所を確認するために提出します。

登記申請書:法務局に提出する相続登記の申請書です。これは、相続人や代理人が記入して提出する書類です。

固定資産評価証明書:登記する不動産の評価額を証明するための書類です。市町村役場や税務署で取得することができます。

遺言執行者の選任がある場合は遺言執行者の戸籍謄本と印鑑証明書:遺言書に遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者が相続登記の申請を行うため、その身分を証明する書類も必要です。

2. 公正証書遺言書を用いる場合の添付書類

 公正証書遺言は、公証役場で公証人の立ち会いのもと作成される遺言書で、最も安全かつ信頼性が高い形式です。公正証書遺言はすでに公証人が作成し、保管されているため、自筆証書遺言のように家庭裁判所での検認手続きは不要です。この点で公正証書遺言は相続手続きを迅速に進めることができるというメリットがあります。

公正証書遺言書による相続登記に必要な書類

公正証書遺言を基に相続登記を行う場合に必要な書類は以下の通りです:

㋐公正証書遺言書の原本:公証役場で作成された遺言書の原本、またはその正本が必要です。公証役場で遺言書を保管している場合は、相続人がその写しを取得して法務局に提出します。

㋑被相続人の除籍謄本:自筆証書遺言と同様に、相続開始を証明するための戸籍謄本(除籍謄本)を提出します。これにより、被相続人の死亡を確認します。

㋒相続人の戸籍謄本または住民票:相続人であることを確認するために、戸籍謄本や住民票を提出します。

㋓登記申請書:公正証書遺言を基に不動産の相続登記を行うための申請書です。

㋔固定資産評価証明書:相続する不動産の評価額を証明するため、市町村役場で取得できる評価証明書を提出します。

㋕遺言執行者の戸籍謄本および印鑑証明書(必要な場合):遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が登記を行うための書類として、その身分証明書や印鑑証明書を提出します。

3. 自筆証書遺言と公正証書遺言の手続き上の違い

 自筆証書遺言と公正証書遺言は、手続きの面でいくつかの大きな違いがあります。

㋐検認の要否:自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必須である一方、公正証書遺言は検認不要です。これにより、公正証書遺言は手続きがスムーズに進むというメリットがあります。

㋑作成時の信頼性:公正証書遺言は公証人が作成するため、遺言の内容が改ざんされる可能性が低く、相続人間の争いを未然に防ぐことが期待されます。自筆証書遺言は自分で作成するため、その信頼性に疑問が生じることもあります。

㋒手続きの迅速さ:公正証書遺言は、検認が不要なため、相続手続きを速やかに進めることができます。自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要なため、その分だけ時間がかかる可能性があります。

4. まとめ

 相続登記を行う際に、遺言書がある場合にはその種類によって必要な添付書類が異なります。自筆証書遺言を用いる場合は検認手続きが必要であり、検認済証明書を取得する必要があります。一方、公正証書遺言の場合は、検認手続きが不要であり、公正証書遺言の正本や写しを提出することで速やかに手続きを進めることができます。どちらの遺言書を利用するにしても、相続登記に必要な書類を正確に揃えることが、円滑な相続手続きの鍵となります。

最新のブログ記事

不動産の売却後に登記を放置することは、一見すると「メリット」があるかのように見える場合がありますが、実際には多くの誤解が含まれており、長期的には深刻な「デメリット」を招く可能性が高いです。ここでは、登記をしないことで考えられるメリットと、その背後にある問題点、さらに発生する相続や第三者による不動産処分の際に生じるリスクについてまとめます。

2024年4月に施行された相続登記の義務化は、全国の不動産所有者に大きな影響を与え始めています。この制度は、相続人が相続した不動産の登記を3年以内に行わなければならないというものです。これにより、未登記の不動産が減少し、不動産の管理や利用がより効率的に行われることを期待されています。しかし、実際の運用において、さまざまな影響が現れています。以下に、いくつかの主要な点を項目ごとにまとめます。

高齢者の生活が困難になっている現状については、さまざまな背景や事例が存在します。ここでは、社会福祉士の方と話をした中で聞いた、主な要因と具体的な事例をいくつか項目ごとにまとめます。