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令和7年1月15日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。
遺産分割をする際に、遺産の範囲を定める必要性があります。その時、生前に贈与を受けていた場合、その期間によっては遺産に含めるといった基準が存在します。また、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした共同相続人には寄与分が認められています。これら規定は、公平に遺産を分割するための基準となります。今回は、特別受益(生前贈与など)について解説いたします。
目次
1.特別受益者の意義
2.特別受益者の相続分
3.算定の基礎となる相続財産の推定
4.受贈者の行為とは?
5.法定相続分又は指定相続分による算定と特別受益者に関する修正
6.特別受益の確定手続
7.持戻しの免除(民法903条第3項)
8.夫婦間における持戻しの免除の意思表示推定規定(民法903条第4項)
9.まとめ
1.特別受益者の意義
共同相続人の中で被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者のことを指します。それでは、どのような基準に基づき遺贈・生前贈与の財産を相続財産に算入するのでしょうか?
2.特別受益者の相続分
「(民法903条)
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4.婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」
それでは、具体的にみていきましょう。
3.算定の基礎となる相続財産の推定
被相続人が相続開始時に有した財産の価額に特別受益たる贈与の価額を加える(みなし相続財産)。
このような処理を特別受益の持戻しと言います。贈与がされた後、相続開始までの間に、受贈者の行為によって、贈与の目的財産が滅失し又はその価格の増減があったとしても、現状(受贈当時の状態)のままであるとみなして計算します。
※(事例)相続人が特別受益の期間内に家の贈与を受け、相続開始時には火事で滅失していても、受贈者の行為によるもので滅失したのであれば、その価格を相続財産に加算するということです。
4.受贈者の行為とは?
①故意の場合はもちろん過失の場合も含むと一般に解されています。
➁家裁による滅失・取り壊し等の事実行為による物理的滅失のほか、贈与・売買等による法律行為による経済的な滅失も含まれます。
③受贈者の行為によらず、転載その他の不可抗力によって滅失した場合は含みません。
5.法定相続分又は指定相続分による算定と特別受益者に関する修正
2.の価額に、各共同相続人の法定相続分又は指定相続分の割合を乗じた値を算出します。
そして、特別受益者については、上記算出した値から特別受益である遺贈又は贈与の価額を控除したものが相続分となります。
何を言っているのかよくわからないと思いますので、図で示します。
(特別受益者の具体的相続分の計算)
つまり、今現存していない・価額が減少していても、贈与時の価額を相続財産に加算し、そこから相続分を乗じて自身の取得できる財産の価額を算出し、そこから受けた贈与の価額を減じることで産出されます。
仮に、その計算結果がゼロ又はマイナスの場合には、特別受益者が相続で取得する財産は有りません。マイナスの場合でも、他の相続人にその価額を返還する必要はないことに注意が必要です。
贈与・遺贈の価額≧相続分の価額:具体的な相続分はありません。
6.特別受益の確定手続
持戻しを適正に行うためには、特別受益である贈与の有無や目的物の価額を確定する必要があります。これは、原則として、共同相続人間の協議でされます。
(最判平7.3.7)
「ある財産が特別受益財産にあたるかどうかは、遺産分割申立て事件、遺留分侵害額請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の各手を必要とする侵犯事件又は訴状事件における前提問題として審理判断されるのであり、それらの事件を離れて、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」
遺産分割事件・遺留分侵害額請求の訴訟で審理判断されるから、特別受益かどうかの判断を別の確認訴訟ですることは不適法であると言っています。
7.持戻しの免除(民法903条第3項)
被相続人が特別受益の持戻しに関する民法規定と異なる意思表示(方式は問わない)をした時は、その意思表示に従うとあります。遺言書などに、これらの事項が記載されている場合などが該当します。
8.夫婦間における持戻しの免除の意思表示推定規定(民法903条第4項)
長年連れ添った配偶者に対する持戻し免除の推定規定があります。
次の3つの要件を満たした場合、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
①婚姻期間が20年以上の夫婦であること。
➁①の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対する遺贈又は贈与であること。
③遺贈又は贈与の対象物が、居住の用に供する建物またはその敷地であること。
持戻し免除推定規定では、婚姻期間・遺贈、贈与の対象物について制限を設けています。
※推定規定とみなし規定の違い
推定規定は、裁判になった場合に推定はされるものの、相手方の証拠などにより覆る可能性がある規定です。一方、みなし規定は、裁判になった場合でもみなされますので、相手方の証拠などにより覆ることがありません。
9.まとめ
特別受益者の相続分についてお話をしてきました。その算出方法と、関連する持戻しの内容について理解を深めることで、共同相続人間の遺産分割を公平に実施することができます。特に、配偶者の要件に該当する場合、持戻しの免除の推定規定があります。有効に活用することで、配偶者の相続発生後の生活の基盤を失うことなく生活することができます。
細かい内容になっておりますので、専門家に相談して遺産分割をスムーズに実施しましょう。
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