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(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

2024年07月23日

遺言書の形式には、主に公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。これらの遺言書のうち、公正証書遺言は、法的に確実でトラブルを防ぎやすい形式として広く利用されています。以下に、公正証書遺言のメリットを自筆証書遺言と比較しながら詳しく説明します。

目次

1. 公正証書遺言のメリット

2. 自筆証書遺言との比較

まとめ


1. 公正証書遺言のメリット

法的確実性の高さ

 公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法的に確実な遺言書となります。公証人は法律の専門家であり、遺言内容が法律に適合しているかを確認しながら作成します。そのため、公正証書遺言は形式不備や内容不明確による無効リスクが極めて低くなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自分で書くため、法的要件を満たさない場合や、内容が曖昧な場合に無効になる可能性があります。

紛失や改ざんのリスクが低い

 公正証書遺言は、公証役場に保管されるため、遺言書が紛失したり、第三者によって改ざんされるリスクが低いです。公証役場に保管されているため、遺言書の存在を確認しやすく、相続人間でのトラブルを防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多く、保管場所が不明だったり、紛失したりするリスクが高くなります。

内容の明確化

 公正証書遺言は、公証人が内容を確認しながら作成するため、遺言内容が明確であることが保証されます。公証人は遺言者の意思を正確に反映し、法律に基づいて適切な表現を用いて遺言書を作成します。そのため、相続人間での解釈の違いや争いが生じにくくなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自由に書くため、内容が曖昧であったり、誤解を招く表現が含まれている場合があります。

遺言執行の容易さ

 公正証書遺言は、公証人が認証しているため、遺言執行がスムーズに行われます。遺言書が法的に確実であることから、相続手続きが迅速に進むことが期待できます。また、公証人が遺言書の内容を証明するため、相続人間での争いが少なくなります。一方、自筆証書遺言は、遺言書の内容や形式に不備がある場合、遺言執行が困難になることがあります。特に、認知の争い(「うちの親父は、この遺言書を書いたとき認知症だったんだ」といったもの)について、公証人と証人2人の立会で作成しますので、ある程度は防ぐことができます。

訂正や変更の簡便さ

 公正証書遺言は、公証人に依頼することで簡単に訂正や変更が可能です。遺言者の意思を正確に反映するために、公証人が内容を確認しながら訂正を行います。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身で訂正を行う必要がありますが、訂正方法に厳格なルールがあり、適切に訂正しないと無効になる可能性があります。

2. 自筆証書遺言との比較

手軽さと費用の違い

 自筆証書遺言は、遺言者が自分で書くため、作成や変更が手軽で費用もかかりません。一方、公正証書遺言は、公証人に依頼するため、手続きがやや煩雑であり、作成費用も発生します。しかし、公正証書遺言は法的確実性が高く、相続トラブルを防ぐための投資と考えることができます。

法的要件の厳格さ

 自筆証書遺言は、全文を遺言者が自筆で書く必要があり、日付や署名、押印も自筆で行う必要があります。これに対し、公正証書遺言は、公証人が作成するため、遺言者が自筆で書く必要はありません。そのため、身体的な制約がある場合でも、公正証書遺言は作成しやすいです。

保管と開示の違い

 自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するため、保管場所が不明確な場合や、紛失・改ざんのリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証役場に保管されるため、遺言書の存在や内容を確実に確認でき、相続人間のトラブルを防ぐことができます。

遺言執行のスムーズさ

 自筆証書遺言は、遺言執行の際に検認手続きが必要です。検認手続きとは、家庭裁判所が遺言書の形式を確認し、遺言書の存在を相続人に知らせる手続きです。この手続きがあるため、遺言執行が遅れる可能性があります。一方、公正証書遺言は検認手続きが不要であり、遺言執行が迅速に行われます。

専門家の関与とアドバイス

 公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法律の専門家のアドバイスを受けながら作成することができます。これにより、遺言内容が法律に適合し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身が作成するため、専門家のアドバイスを受ける機会が少なく、法的に不備が生じる可能性があります。

まとめ

 公正証書遺言は、法的確実性の高さ、紛失や改ざんのリスクの低さ、内容の明確化、遺言執行の容易さ、訂正や変更の簡便さなど、多くのメリットがあります。一方、自筆証書遺言は、手軽さと費用の安さがメリットですが、法的要件の厳格さや保管のリスク、遺言執行の煩雑さがデメリットとなります。遺言書を作成する際には、自身の状況やニーズに応じて、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらが適しているかを検討し、専門家のアドバイスを受けながら適切な遺言書を作成することが重要です。これにより、相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。

 ただし、公正証書遺言であっても、争いにより裁判で覆る可能性があります。遺言者の状態をしっかりみて、推定相続人である家族の方たちとしっかりコミュニケーションをとって、対策を講じることが重要です。

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