平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

(論点)法定単純承認について

2025年02月13日

民法第921条は、相続における法定単純承認の概念を規定しており、相続人が故人の債務を承認することで発生する法的効果を示しています。法定単純承認は、債務者(被相続人)の死後に、相続人が遺産を承認することによって、その債務の消滅時効が中断するという重要な役割を果たします。本稿では、民法第921条を中心に法定単純承認の概念、要件、及びその法的効果について詳しく説明します。

目次

1. 法定単純承認の概要(民法第921条)

2. 法定単純承認の発生要件

3. 法定単純承認の法的効果

4. 法定単純承認を避けるための方法

5. 法定単純承認と時効

6. まとめ


1. 法定単純承認の概要(民法第921条)

 民法第921条では、相続人が被相続人の遺産を承認することで、その債務について単純承認が成立することを規定しています。この単純承認とは、相続人が被相続人の遺産の一部または全てを承認する行為を指し、この行為によって債務の消滅時効が中断し、相続人がその債務を負うことになります。

 具体的には、相続人が遺産を受け入れる意思を示すこと、または遺産を管理することによって、その時効が中断されるとされます。これにより、相続人は故人の債務についての責任を引き継ぎ、消滅時効が進行しないことになります。

2. 法定単純承認の発生要件

 法定単純承認が成立するためには、相続人が以下の行為を行うことが必要です。

遺産の承認:相続人が遺産を承認する意思を示すことが重要です。例えば、相続人が遺産分割協議を行い、その過程で故人の債務を認識した場合、その認識が単純承認とみなされることがあります。

債務の履行:相続人が故人の借金やその他の債務を履行した場合も、法定単純承認が成立します。支払いが行われることで、債務の消滅時効が中断し、相続人は債務を負うことになります。

遺産の管理行為:相続人が故人の不動産を管理したり、事業を引き継いだりする行為も法定単純承認として認められることがあります。管理行為が行われると、遺産の受け入れが示され、その結果、債務の承認と見なされます。

3. 法定単純承認の法的効果

 法定単純承認が成立すると、相続人は次のような法的効果を受けます。

債務の引き継ぎ:法定単純承認が成立した場合、相続人は故人が負っていた債務を引き継ぎ、その履行義務を負うことになります。このため、相続人は相続開始後、債務の履行を行う義務を負います。

消滅時効の中断:相続人が故人の債務を承認すると、その債務についての消滅時効が中断します。民法第144条に基づき、時効期間の進行が一時的に停止され、債務が消滅することがない状態となります。

債権者の権利行使:相続人が債務を承認した場合、債権者はその債務について再び請求を行うことができます。承認行為により、債権者は相続人に対して再度債務の履行を求める権利を持ちます。

4. 法定単純承認を避けるための方法

 法定単純承認を回避するためには、相続放棄が有効な手段となります。相続放棄を行うことで、相続人は故人の遺産を一切承継せず、債務も負わないことになります。相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。

 また、相続人が故人の債務を認識し、その承認を避けたい場合は、遺産の管理行為や債務の履行を行わないことが重要です。相続人が故人の遺産を放置し、相続放棄をすることによって、法定単純承認の成立を防ぐことができます。

5. 法定単純承認と時効

 法定単純承認によって、時効は一時的に中断され、債務は消滅しません。そのため、相続人が故人の債務を承認した場合、その後の消滅時効の進行は再開されます。時効期間の進行が停止されることにより、相続人は故人の債務に対して再度履行義務を負うこととなり、債務が引き継がれることになります。

 時効が中断した後、相続人は債務の履行義務を果たさなければならないため、慎重に対応する必要があります。もし、債務を放置した場合、債権者は再度請求する権利を有することになります。

6. まとめ

 法定単純承認は、相続において相続人が故人の債務を承認することで成立するものであり、その後の法的効果として、債務の引き継ぎや消滅時効の中断を引き起こします。相続人は、故人の債務を履行したり管理したりすることによって、法定単純承認を行ったとみなされ、その責任を引き継ぐことになります。相続放棄を行うことで、法定単純承認を回避することが可能であり、遺産の管理や債務履行について慎重な判断が求められます。

最新のブログ記事

近年、高齢者の相続対策の一環として、生前贈与が注目されています。生前贈与は、遺産を遺す前に財産を譲渡することで、相続時の税負担を軽減したり、資産分配を円滑に進めたりする目的で利用されることが多いです。しかし、生前贈与は遺留分との関係で注意が必要です。遺留分は法定相続人に保障された最低限の権利であり、生前贈与が過度に行われると、遺留分権利者の利益を損なう可能性があるため、法律上の争いが生じることも少なくありません。

令和7年度の司法書士試験が近づく中、各予備校による試験分析が発表され、その情報を基にした対策が重要視されています。司法書士試験は法改正や過去の出題傾向を反映するため、最新の情報を取り入れた効率的な学習が鍵となります。本稿では、各予備校の分析を基に、今年度の試験に向けた有効な対策について解説します。