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(論点)生前贈与と遺留分の関係

2025年03月10日

近年、高齢者の相続対策の一環として、生前贈与が注目されています。生前贈与は、遺産を遺す前に財産を譲渡することで、相続時の税負担を軽減したり、資産分配を円滑に進めたりする目的で利用されることが多いです。しかし、生前贈与は遺留分との関係で注意が必要です。遺留分は法定相続人に保障された最低限の権利であり、生前贈与が過度に行われると、遺留分権利者の利益を損なう可能性があるため、法律上の争いが生じることも少なくありません。

目次

1.生前贈与とは

2.遺留分の基本概念

3.生前贈与と遺留分の関係

4.生前贈与による遺留分侵害のリスク

5.遺留分減殺請求とは

6.生前贈与と遺留分の調整方法

7.まとめ


1. 生前贈与とは

 生前贈与は、被相続人が生存中に自分の財産を相続人や第三者に無償で譲渡する行為です。これにより、相続発生後に遺産分割をスムーズに進めることができるほか、相続税対策としても有効です。特に、相続税の基礎控除が引き下げられた現在、財産を事前に分散させることで、相続税の負担を軽減することが可能になります。

 しかし、生前贈与には法的な制約が伴います。その一つが、相続人の遺留分に関する問題です。生前贈与が過度に行われると、遺留分権利者の利益を侵害する可能性があるため、その点に配慮が必要です。

2. 遺留分の基本概念

 遺留分とは、被相続人が遺言などで自由に財産を処分できる範囲を制限し、一定の法定相続人に対して保障される最低限の財産取得権のことを指します。遺留分の目的は、相続人が遺産分割において不当な不利益を受けないようにすることです。日本の民法では、直系尊属、子、配偶者が遺留分権利者とされ、その割合は相続財産の半分、直系尊属のみの場合は3分の1と規定されています。

3. 生前贈与と遺留分の関係

 生前贈与が遺留分と関わるのは、被相続人が相続財産を事前に贈与しすぎた場合です。民法第903条では、遺留分の算定において、生前に贈与された財産の一部が「特別受益」として扱われる可能性があると定められています。これは、相続人が他の相続人に比べて不公平な利益を享受することを防ぐための規定です。

 例えば、被相続人が特定の子供に生前贈与を行った場合、その贈与額が遺産の多くを占めると、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があります。このような場合、遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求を行う権利があります。

4. 生前贈与による遺留分侵害のリスク

 生前贈与は有効な相続対策である一方、遺留分を侵害するリスクも伴います。特に、特定の相続人や第三者に対して大きな生前贈与を行う場合、他の相続人が遺留分を侵害されたと感じることがあります。贈与が死亡から1年以内に行われた場合、その財産は遺留分の計算に組み込まれることがあり、相続人間のトラブルの原因となることが少なくありません。

5. 遺留分減殺請求とは

 遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された相続人が、侵害分を取り戻すために請求できる権利です。生前贈与により遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、侵害分を補填するために、贈与を受けた者に対して返還請求を行うことができます。ただし、この請求は、相続が発生した後1年以内に行う必要があり、時効が成立すると請求権は消滅します。

6. 生前贈与と遺留分の調整方法

 生前贈与と遺留分の問題を回避するためには、いくつかの調整方法があります。例えば、贈与契約を行う際に、相続人間で予め合意を得ておくことが重要です。また、遺言書を作成し、遺留分権利者に対して十分な説明を行うことで、後のトラブルを防ぐことができます。

 もう一つの方法は、遺留分放棄の制度を活用することです。遺留分権利者が家庭裁判所の許可を得て、遺留分を放棄することで、生前贈与や遺産分割の自由度を高めることができます。ただし、この放棄は遺留分権利者にとって重大な決定となるため、慎重な判断が必要です。

7. まとめ

 生前贈与は、相続対策として非常に有効な手段ですが、遺留分との関係で注意が必要です。遺留分権利者の利益を侵害しないように、事前の計画や相続人間での合意形成が不可欠です。また、遺留分減殺請求のリスクを回避するためには、遺言書の作成や遺留分放棄制度の利用なども検討する必要があります。生前贈与を行う際には、法律的な観点を十分に考慮し、専門家の助言を受けることが重要です。

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