31:公正証書遺言でつないだ故人の想い
ちょうど今頃の季節になると、どうしてもご高齢の方たちの体調が悪くなってしまう傾向があります。以前、介護施設の施設長の経験がありますので、近所の住宅街で救急車の音を聞く頻度が上がってくるので、どうしても意識してしまいます。
そんな中、7月に公正証書遺言作成の依頼をされた方のお話をしたいと思います。(守秘義務があるので、その範囲内で)
ご依頼があってから、財産の調査や税理士先生との打ち合わせなどを行いながら進めていきましたが、ご夫婦ともにご高齢でしたので、ともに配偶者に財産を移転することに異議はありませんでしたが、すぐにお子様たちへの財産の分け方については、決めかねているご様子でした。
いろいろと案を出しましたが、「まだ、家族と話ができる段階ではない」とおっしゃられて、遺言書の内容がいろいろと変わっていきました。そんなある日「やっぱり、遺言は諦める」との電話連絡がありました。
通常であれば、去る者は追わないポリシーでやってきましたが、その時のご依頼者の諦めた調子の言葉から、「本当は、こんなことはお客様に言わないのですが、全財産を配偶者の方に移す第1弾の遺言書をとりあえず作りませんか。現状のすべての不安解消にはならないかもしれませんが、時間的猶予は作り出せると思います。第1弾を作成しておけば、あとは修正をかけることも可能です。いかがでしょうか?」自分自身なぜこのような提案をしたのか不思議なくらいでした。
公証役場に予約を取って、当日お会いして、私自身も証人として参加いたしました。
公正証書遺言作成後、ご家族が迎えに来られるまで、少しお話をしたのですが、すごく生き生きとされていました。私は「これから第2弾を考えていきましょう。」とお話をして別れました。
そして、季節が変わりご依頼者の方が亡くなったと連絡を受けて、ご家族にお会いしました。
ご家族からは、「良く遺言書を作成しておいてくれた。助かります。」とのお言葉をいただきました。
遺言書で個人の想いをつなぐことができました。